大規模修繕中に理事会・理事長が交代したら?分譲マンションの引き継ぎ資料・決定事項・契約管理

『大規模修繕中に理事会・理事長が交代したら?分譲マンションの引き継ぎ資料・決定事項・契約管理』
をご紹介させて頂きます!
分譲マンションの大規模修繕中に理事長や理事が交代しても、工事そのものを最初からやり直すわけではありません。
ただし、これまでに承認した工事範囲・予算・契約・変更内容と、まだ決まっていない事項を区別して引き継ぐ必要があります。
重要なのは前任者の記憶ではなく、総会議事録、契約書、見積書、工程表、定例会議事録などから「何が決まり、何が未決なのか」を次の理事会が確認できる状態にすることです。
大規模修繕は、建物診断、見積、施工会社選定、総会、契約、着工、工事、引渡しまで長期間にわたることがあります。
その途中で理事長や理事、担当役員、修繕委員が交代することは珍しいことではありません。
問題になるのは、人が変わったことそのものではありません。
前の理事会が「なぜそう決めたのか」を、次の理事会が資料から確認できなくなることです。
この記事では、この7項目を一つずつ整理しながら、次の理事会が現在地を確認できる「引き継ぎファイル」を作っていきます。
目次
- 理事長・理事が交代したら、大規模修繕は最初から検討し直す?
- 引き継ぐのは「会話」ではなく、現在の状態
- 引き継ぎでは、まず「何を決めたか」ではなく「何で決めたか」を見る
- 最初に「決定済みの事項」を固定する
- 「資料がある」だけでなく、どれが最新版か分かる状態にする
- 引き継ぎで最も重要なのは「まだ決まっていないこと」
- 理事長が交代しても、契約内容を「記憶」で引き継がない
- 理事長交代時に契約書・届出・登録情報はどう確認する?
- 工事金額は「契約額」だけを引き継がない
- 工事中の「変更」は、口頭の経緯まで引き継がない
- 新しい理事会が、住民への説明を一からやり直さないために残すもの
- 「資料を渡した」で終わらず、次の行動まで引き継ぐ
- 理事会交代時に「1ページの表紙」を作る
- 大規模修繕で理事会が交代するとき、何を引き継げばよい?
- 管理会社が資料を持っていれば、理事会側の引き継ぎは不要?
- 資料を理事長個人だけで管理しても大丈夫?
- 修繕委員会があれば、理事会交代の影響はなくなる?
- 新しい理事長なら、前年度の決定を自由に変更できる?
- 大規模修繕が終われば、引き継ぎファイルは不要?
- まとめ|大規模修繕は「担当者」ではなく「判断履歴」を次の理事会へ渡す
理事長・理事が交代したら、大規模修繕は最初から検討し直す?
役員が交代しただけで、総会で承認済みの事項や締結済みの契約を自動的に白紙へ戻すわけではありません。一方、前理事会が検討していただけで正式承認されていない事項は、次の理事会が内容・権限・承認状況を確認する必要があります。
最初に混ぜてはいけないのが、
承認済み と 検討中
です。
前年度の理事会で何度も話し合っていたとしても、正式な承認手続きが完了しているとは限りません。
反対に、担当者が交代していても、総会決議や契約等によって既に正式に決まっている事項があります。
「前理事会が何を話したか」ではなく、現在それぞれの事項がどの状態にあるのかを確認します。
引き継ぐのは「会話」ではなく、現在の状態
前任者から「たぶんこの内容で進める予定でした」と口頭で聞くだけでは、次の理事会は正式な状況を確認できません。
一つひとつの事項に、現在の状態を付けます。
例えば「施工会社は決まっています」という言葉だけではなく、総会承認済みなのか、契約済みなのかまで状態を確認します。
追加工事であれば、「見積が出ている」ことと「理事会・総会等で必要な承認を終えている」ことを分けます。
引き継ぎでは、まず「何を決めたか」ではなく「何で決めたか」を見る
結論だけでなく、その結論へ至った判断根拠と承認記録まで残します。次の理事会が同じ資料を見たとき、「なぜこの会社・仕様・工事範囲になったのか」を確認できる状態が重要です。
例えば「施工会社はA社です」という結果だけでは十分ではありません。
- 何社を比較したか
- どの仕様で見積を比較したか
- どの評価資料を使ったか
- どの会議で検討したか
- 総会承認があるか
まで確認します。
重要なのは、資料を渡すことではありません。次の理事会が同じ判断経緯を再現できることです。
最初に「決定済みの事項」を固定する
工事目的・工事範囲・予算・発注方式・施工会社・工期・契約金額・仕様・総会承認事項など、正式に決定している内容を先に固定します。
ここで注意したいのは、
前理事会で話し合った
と
正式に決定した
を同じ扱いにしないことです。
決定済みの項目を確認するときは、その根拠となる資料もセットで探します。
※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
「資料がある」だけでなく、どれが最新版か分かる状態にする
見積書・工程表・仕様書・施工計画・変更資料は複数版が残る場合があるため、「資料が存在する」だけではなく、現在どの版を基準にしているか確認できる状態にします。
例えば工程表であれば、初回版、変更版、再変更版が残っている場合があります。
ファイル名に日付や「第3版」等を付ける方法もありますが、特定の命名方法を絶対条件にする必要はありません。
次の理事会が開いたとき、「どれを見れば今の状態が分かるのか」が分かればよいという考え方です。
引き継ぎで最も重要なのは「まだ決まっていないこと」
決定事項以上に、次の理事会が判断しなければならない未決事項を明確にします。未決事項には、次の行動・担当・期限を付けます。
例えば、
- 追加工事見積を確認中
- 仕様変更の回答待ち
- 住戸内立入り日を調整中
- 工程変更を協議中
- 住民からの質問へ回答準備中
- 検査指摘箇所を是正中
という状態です。
「次に何をするか」「誰が確認するか」「いつまでか」をセットにします。
※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
次期理事が今日就任したとします。
「現在の契約金額」
「未承認の追加工事」
「次回の判断期限」
この3つを、3分以内に確認できますか?
確認できない場合は、資料の量ではなく、「現在の状態」が整理されていない可能性があります。
理事長が交代しても、契約内容を「記憶」で引き継がない
工事請負契約書、見積内訳、仕様書、工程、支払条件、変更契約、保証条件等を契約図書として確認します。前任者の説明だけで契約条件を判断しません。
特に分けたいのは、
契約済みのこと
と
工事中に相談していること
です。
施工会社と現場で話し合っている内容があっても、それが契約変更まで完了しているとは限りません。
工事請負契約書そのものの確認方法については、大規模修繕の工事請負契約書とは?契約図書・工事範囲・金額・工期・支払・保証の確認方法をご覧ください。
理事長交代時に契約書・届出・登録情報はどう確認する?
理事長が変わったという理由だけで、工事請負契約そのものを必ず再締結するとは一律に判断できません。契約当事者、管理規約、契約条件、代表者変更に伴う手続き等を確認します。
一方で、代表者変更に伴い、確認や変更手続きが必要になる場合があります。
- 契約上の代表者表示
- 銀行・口座関係
- 管理会社側の登録
- 施工会社側の連絡先・登録
- 融資関係
- 電子サービス等の管理者
などです。
「理事長が交代した=契約を全部やり直す」とは判断せず、各契約・規約・手続きに沿って確認します。
契約者と連絡担当者は同じとは限らない
担当理事が変わったからといって、契約主体や承認権限まで同じように変わるとは限りません。
反対に、代表者変更等について正式な手続きが必要な場合もあります。
工事金額は「契約額」だけを引き継がない
契約金額だけでなく、変更後の金額、支払済み金額、未払金額、予備費・追加工事までつなげて確認します。
理事会交代時に「契約額はいくらか」だけ確認しても、現在の資金状況は分かりません。
併せて、
- 既に支払った金額
- 今後の請求予定
- 変更契約の有無
- 出来高の確認状況
- 予備費の使用状況
- 残予算
を確認します。
出来高については、大規模修繕の出来高に関する記事、変更契約については、大規模修繕の変更契約とは?追加・減額・工期・承認内容の確認方法、追加工事については、大規模修繕の追加工事に関する記事をご覧ください。
工事中の「変更」は、口頭の経緯まで引き継がない
材料・数量・工程・施工範囲・金額・工期等に変更がある場合は、変更理由、変更内容、費用・工期への影響、承認状態を資料として残します。
工事中には、
- 材料変更
- 数量の増減
- 工程変更
- 施工範囲変更
- 追加工事
- 減額
- 工期延長
等が発生する場合があります。
仕様変更そのものについては、別記事「大規模修繕で材料・仕様を変更しても大丈夫?代替品・同等品・見積変更と承認の確認ポイント」で詳しく確認できます。
工事定例会議事録は「全部読み返す」前に4つを見る
理事会交代時に、工事開始からの定例会議事録を一枚目からすべて読むだけでは、現在の判断事項を把握するまで時間がかかります。
まず、
- 未決事項
- 変更事項
- 承認事項
- 回答期限
を拾います。
工事定例会議については、大規模修繕の工事定例会に関する記事をご確認ください。
新しい理事会が、住民への説明を一からやり直さないために残すもの
既に案内した内容、今後案内する内容、住民からの質問、回答状況、個別調整中の事項を整理して引き継ぎます。
具体的には、
- 既に住民へ案内したこと
- これから案内する予定のこと
- 住民から出た主な質問
- 回答済みか未回答か
- 個別調整中の住戸
- 住戸内立入り調整
- 工事中の生活制限
- 問い合わせ窓口
等です。
質問だけが残っているのか、正式回答まで済んでいるのかを確認します。
個人情報は一般の引き継ぎファイルへ詰め込みすぎない
住戸連絡先や個別事情等を引き継ぐ場合は、閲覧権限や管理方法を確認します。
誰でも閲覧できる一般資料へ、個人情報を無制限にまとめることを前提にはしません。
「資料を渡した」で終わらず、次の行動まで引き継ぐ
引き継ぎ完了は、資料を渡した時点ではありません。次の理事会が「次に何を判断し、誰が動き、いつまでに確認するか」を把握できるところまで整理します。
例えば、
- 施工会社からの回答を待つ
- 追加見積を確認する
- 次回理事会で承認する
- 総会議案へ入れる
- 住民へ通知する
- 検査日を確認する
といった次の行動です。
※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
理事会交代時に「1ページの表紙」を作る
資料が多いほど、最初に現在地を示す1ページが役立ちます。新任理事が、この1ページから詳細資料へ進める状態を作ります。
この1ページを開いたとき、新しい理事会が「今どこにいて、次に何を判断するのか」を把握できる状態が目標です。
大規模修繕では、役員が交代しても工事範囲・契約・予算・変更事項・住民対応が追える状態にしておくことが重要です。現在の見積、契約書、議事録、工程表などが分散している場合は、次の理事会が判断できる資料へ整理してから工事を継続できます。
大規模修繕で理事会が交代するとき、何を引き継げばよい?
総会・理事会の議事録、契約書、見積・仕様書、工程表、支払状況、工事中の変更、未決事項、住民対応、次回の判断期限などを整理します。資料そのものだけでなく、何が決定済みで何が未決なのかを明確にすることが重要です。
引き継ぎファイルは、資料を大量に複製するためのものではありません。
どの資料を見れば答えが分かるかを新しい理事会へ渡すためのものです。
管理会社が資料を持っていれば、理事会側の引き継ぎは不要?
管理会社が資料保管や運営補助を担っている場合でも、管理組合側の引き継ぎが不要になるとは限りません。管理組合として、何を承認し、何を契約し、何が未決で、次に何を判断するのか確認できる状態が必要です。
管理会社を利用していること自体は、資料管理や運営の継続に役立ちます。
ただし、
- 管理組合が何を承認したのか
- 現在どの契約で工事しているのか
- 現在の未決事項は何か
- 次回理事会で何を判断するのか
まで管理会社任せにし、理事会側で確認できない状態は避けます。
資料を理事長個人だけで管理しても大丈夫?
大規模修繕の重要資料を、特定の理事長・担当者だけが確認できる状態へ依存しないことが重要です。個人のパソコン・メール・保存場所だけではなく、役員が交代しても管理組合として確認できる保管場所を決めます。
特定のクラウドサービスや管理方法を一律に使用する必要はありません。
大切なのは、
管理組合として残る場所
を決めることです。
修繕委員会があれば、理事会交代の影響はなくなる?
修繕委員会が継続的に検討を補助していても、総会決議、契約、予算、理事会承認などの引き継ぎは必要です。修繕委員会には判断経緯を継続しやすくする役割を持たせ、正式な承認手続きとは分けて整理します。
大規模修繕が複数年度にまたがる場合、修繕委員会が継続的に検討へ関わることで、判断経緯を引き継ぎやすくなる場合があります。
しかし、修繕委員会が存在することだけで、
- 総会
- 契約
- 予算
- 理事会の判断
等の正式な手続きが不要になるわけではありません。
修繕委員会の役割については、大規模修繕の修繕委員会に関する記事をご覧ください。
新しい理事長なら、前年度の決定を自由に変更できる?
新しい理事長が就任したことだけで、過去の総会決議や契約内容を自由に変更できるとは一律に判断できません。一方、前理事長の時代に決めた内容だから次の理事会が一切確認できない、ということでもありません。
確認したいのは、
誰が決めたか
より
どの権限・手続きで決まったか
です。
管理規約の確認については、別記事「大規模修繕で管理規約はどこを見る?分譲マンションの共用部分・費用負担・総会前の確認ポイント」で整理しています。
総会決議については、大規模修繕の総会決議とは?管理組合が承認までに準備すべき内容と進め方、決議要件については、大規模修繕は普通決議?特別決議?総会で確認する工事範囲と決議要件をご覧ください。
大規模修繕が終われば、引き継ぎファイルは不要?
工事が終わった後も、引き継ぎは続きます。完成図書、保証書、施工写真、変更記録、最終金額、点検予定、アフター点検、不具合対応、修繕履歴等を次の管理組合へ残します。
大規模修繕は、引渡しをもって建物管理そのものが終了するわけではありません。
完成後には、
- 何を施工したのか
- 工事中に何を変更したのか
- 最終的にいくら支払ったのか
- どの保証が残っているのか
- 次の点検はいつか
を追える状態にします。
完成図書については、大規模修繕の完成図書とは?管理組合が引渡し時に確認・保管したい資料と修繕履歴、保証期間については、大規模修繕工事の保証期間に関する記事、修繕履歴については、大規模修繕の修繕履歴に関する記事をご覧ください。
次の理事会が判断できる状態ですか?
まとめ|大規模修繕は「担当者」ではなく「判断履歴」を次の理事会へ渡す
分譲マンションでは、大規模修繕の途中で理事長や理事が交代すること自体は特別なことではありません。
問題になるのは、
人が変わったこと
ではなく
判断根拠が消えること
です。
引き継ぎでは、次の順番で確認します。
「誰が知っているか」ではなく、「どの資料を見れば分かるか」へ変えることが、大規模修繕を年度をまたいで継続するポイントです。
そして最終的には、人が変わっても、大規模修繕プロジェクトの記憶が管理組合に残る状態を作ります。
マンション大規模修繕全体の進め方を確認することで、引き継ぐ資料が工事全体のどこに位置するのかも確認できます。
「役員交代を前に資料を整理したい」「どこまで決定済みなのか分からない」「契約・追加工事・支払・議事録が別々に保管されている」など、現在の資料を基に、次の理事会が判断できる状態へ整理できます。
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