大規模修繕の配管はどこまで工事する?共用部・専有部の境界と給水・排水管の確認ポイント

『大規模修繕の配管はどこまで工事する?共用部・専有部の境界と給水・排水管の確認ポイント』
をご紹介させて頂きます!
マンションの給水管・排水管は、一本の設備としてつながっていても、すべてを同じ人が管理するとは限りません。
大規模修繕で配管工事を検討するときに難しいのは、「給水管か排水管か」よりも、「どこまでが管理組合の管理範囲で、どこからが各住戸の範囲なのか」を整理することです。
住戸内・PS・立て管など、配管がある場所や名称だけで判断せず、管理規約・配管経路・今回の工事範囲を重ねて確認します。
この記事では配管をこの順番で追います
場所だけで判断しないための5つの順番
目次
- 大規模修繕の配管は共用部分?専有部分?
- 給水管はどこからどこまで大規模修繕で工事する?
- 排水管はどこまで管理組合の工事になる?
- PS(パイプスペース)の配管は共用部分?
- 共用部分の配管だけ交換すると住戸内の古い配管はどうなる?
- 専有部分の配管も大規模修繕と一緒に工事できる?
- 配管工事の範囲は5項目で整理する
- 共用部・専有部で配管工事の費用負担はどう変わる?
- 配管工事では住戸内への立ち入りが必要?
- 配管更新中は水道やトイレを使える?
- 配管図・竣工図が見つからない場合はどうする?
- 住戸ごとのリフォームで配管経路が違うことはある?
- 漏水が起きたら配管の管理区分をどう確認する?
- 外壁の大規模修繕と給排水管更新は同時に行う?
- 配管の工事範囲を決めるために最低限そろえたい3つの資料
- まとめ|配管工事は「どこにある管か」ではなく管理区分と工事範囲を重ねて考える
- 大規模修繕の配管に関するよくある質問
大規模修繕の配管は共用部分?専有部分?
マンションの配管は、すべてが共用部分、またはすべてが専有部分というわけではありません。給水・排水の系統の中で管理区分が分かれている場合があるため、大規模修繕では工事対象となる配管の区分を最初に整理します。
配管を一本の線として追ってみると、建物の共用設備から各住戸へつながり、その後また排水系統へ戻っていきます。
設備としてはつながっていても、管理する主体や費用負担まで一本につながっているとは限りません。
「住戸の中にあるか」だけでは判断しない
住戸内や住戸付近を通っている配管だからといって、その場所だけで専有部分と決めることはできません。
建物構造によっては、住戸付近やPS(パイプスペース)等を共用系統の配管が通っている場合もあります。
反対に、共用廊下やPSに近いからという理由だけで、すべて管理組合が管理する配管と判断することもできません。
工事範囲と管理範囲は、同じ意味ではありません。
「何戸が使う管か」は判断材料の一つ
複数住戸へ水を送る配管や、複数住戸からの排水が合流する配管と、特定住戸へ分岐した先の配管では役割が異なります。
ただし、使用する住戸数だけで共用・専有を確定するわけではありません。
最終的には、管理規約・配管図・竣工図・実際の配管経路等を照合して判断します。
マンション全体の共用部分・専有部分・専用使用部分の違いについては、大規模修繕では専有部分も工事する?共用部分・専有部分・専用使用部分の違いと管理組合の確認ポイントをご覧ください。
給水管はどこからどこまで大規模修繕で工事する?
大規模修繕だから給水管を入口から住戸内まで一括して交換するとは限りません。給水の流れを追いながら管理区分を確認し、そのうえで今回どこまで更新するのかを決めます。
給水の流れを追う
ここで問題になるのが、この流れのどこに共用部分と専有部分の境界があるのかです。
その位置は、すべてのマンションで全国一律に同じとは限りません。
大規模修繕だから給水管すべてを交換するわけではない
給水管を今回の工事対象へ含めるかは、次のような条件を重ねて判断します。
- 現在の劣化状況
- 配管材料
- 過去の更新履歴
- 漏水履歴
- 長期修繕計画
- 調査結果
- 今回の大規模修繕の工事範囲
築年数だけを理由に「今すぐ全部交換」と判断するのではなく、実際の設備状況を確認します。
給水管交換そのものの工法・費用・断水等については、マンションの給水管交換費用はどう決まる?共用部・専有部・工法・断水・見積の確認方法で詳しく解説しています。
排水管はどこまで管理組合の工事になる?
排水管も、排水系統全体が一律に管理組合の工事になるとは限りません。住戸側から建物外へ向かって排水経路を追い、管理規約と配管図を重ねて工事範囲を整理します。
排水は住戸側から逆方向に追う
ここでも、名称だけで答えを出すことは避けます。
「立て管だから必ず共用」「枝管だから必ず専有」と単純に暗記するのではなく、対象マンションの管理規約・配管図・現況から確認します。
排水管工事そのものについては、マンションの排水管工事とは?交換・立て管・横主管・費用・排水制限の確認方法をご覧ください。
配管の管理区分で迷いやすい3つ
→ 場所だけでは決めません。その配管がどの系統なのか、管理規約でどのように扱われているのかを確認します。
→ PSという場所だけでは決めません。PS内には複数の系統が通っている場合があります。
→ 利用状況だけでは決めません。配管経路と管理規約を照合します。
PS(パイプスペース)の配管は共用部分?
PS内にあるという理由だけで、すべての配管を共用部分と判断することはできません。どの配管がどの住戸・系統につながっているかを確認し、管理規約上の区分と照合します。
PSには、給水・排水など複数の配管や設備がまとめて配置されている場合があります。
そのため、確認する順番は、
- どの配管なのか
- どの系統へつながっているか
- どの住戸へ接続しているか
- 管理規約ではどう定められているか
- 竣工図・配管図ではどう描かれているか
- 現地で確認できる状態と一致しているか
となります。
PS自体の管理区分についても、個別マンションの規約等で確認します。
「PS内=共用部分」という場所だけの判断は避けます。同様に、メーター・壁・床・天井など特定の位置だけを全国共通の境界として扱うことも避けてください。
共用部分の配管だけ交換すると住戸内の古い配管はどうなる?
共用部分の配管を更新しても、専有部分側の配管まで自動的に新しくなるわけではありません。今回どこまで交換し、どこを既存のまま残すのかを工事計画で明確にします。
大規模修繕で共用配管を更新するとき、管理組合として確認しておきたいのは「交換する配管」だけではありません。
交換しない配管がどこに残るのかも重要です。
工事計画としては、たとえば次のような整理があります。
- 共用部分だけ今回更新する
- 共用部分と専有部分側を一体的に検討する
- 共用部分は管理組合工事、住戸側は別途個別対応とする
どれが適切かは、管理区分、劣化状況、工事条件、住民調整、費用等によって異なります。
工事完了後は「何を交換したか」だけでなく、「何を交換していないか」も管理組合と区分所有者が理解できる状態にしておくことが重要です。
専有部分の配管も大規模修繕と一緒に工事できる?
工事計画によっては、共用部分の配管更新に合わせて専有部分側の配管工事を検討する場合があります。ただし、同時施工だから管理組合負担になる、共用部分になる、全住戸へ一律に施工できるという意味ではありません。
専有部分側まで工事する場合は、設備だけでなく管理・契約・住民対応の確認が必要になります。
- 管理規約上の管理区分
- 今回の工事範囲
- 費用負担
- 対象住戸
- 住戸内への立ち入り
- 必要となる施工同意等
- 工事日程
- 保証範囲
同時施工できるかどうかと、誰が費用を負担するかは別の論点です。
共用部分・専有部分の管理区分そのものについては、大規模修繕では専有部分も工事する?共用部分・専有部分・専用使用部分の違いと管理組合の確認ポイントも併せてご確認ください。
配管工事の範囲は5項目で整理する
配管工事の範囲を決めるときは、「どの管か」だけで終わらせず、場所・管理区分・今回施工する範囲・費用負担まで一枚で整理します。管理組合ごとに内容を埋めることで、工事範囲の線引きが見えやすくなります。
※スマートフォンでは表を横にスクロールできます。
| 配管名・系統 | 配管の場所・経路 | 管理区分 | 今回施工する? | 費用負担 |
|---|---|---|---|---|
| 給水系統 | 配管図・現地で確認 | 管理規約で確認 | 今回の工事計画で整理 | 区分・契約内容等から確認 |
| 排水系統 | 配管図・現地で確認 | 管理規約で確認 | 今回の工事計画で整理 | 区分・契約内容等から確認 |
| その他の対象配管 | 対象建物に合わせて記載 | 個別に確認 | 対象/対象外を整理 | 必要な負担区分を整理 |
目的は、配管図・管理規約・工事計画を一つの表へ重ね、どこが未確認なのかを見える状態にすることです。
給排水管の更新では、配管の劣化だけでなく、共用部分と専有部分の境界や今回の施工範囲を整理する必要があります。
既存図面や建物状況を踏まえて工事範囲を確認したい場合は、設備更新を含めた大規模修繕として検討できます。
共用部・専有部で配管工事の費用負担はどう変わる?
管理組合が管理する範囲と、区分所有者側が管理する範囲では、費用負担の考え方が異なる場合があります。ただし、「共用部分だから必ず修繕積立金」「専有部分だから必ず全額個人負担」と単純化せず、規約や工事の実施方法を確認します。
配管工事では、共用部分と専有部分をまたぐ一体的な施工を検討する場合があります。
その場合は、単純に配管の管理区分だけを見るのではなく、
- 管理組合が一括して発注する範囲
- 区分所有者側の負担が発生する範囲
- 管理規約上の取り扱い
- 総会等で決める内容
- 施工契約上の範囲
を整理します。
大規模修繕全体の費用負担については、別記事「大規模修繕の費用は誰が払う?修繕積立金・一時金・専有部分と管理組合の負担区分」で詳しく解説しています。
配管工事では住戸内への立ち入りが必要?
工事する配管・工法・接続位置によっては、住戸内への立ち入りが必要になる場合があります。すべての配管工事で住戸内へ入るわけではないため、対象住戸と施工位置を確認します。
住戸内への立ち入りが必要になる場合は、設備工事だけでなく住民対応も工事計画へ含める必要があります。
- 対象となる住戸
- 施工場所
- 点検口の位置
- 配管の接続位置
- 立ち入り予定日
- 作業時間帯
- 居住者の在宅対応
- 予定変更時の連絡方法
住戸内への立ち入り全般については、別記事「大規模修繕で住戸内への立ち入りは必要?対象工事・在宅対応・日程調整・住民案内の確認ポイント」をご覧ください。
配管更新中は水道やトイレを使える?
給水管工事では一時的な断水、排水管工事では排水制限が必要になる場合があります。ただし、工法・施工範囲・系統によって生活への影響は異なります。
No.411では生活制限の詳細ではなく、「どの配管を今回工事するのか」までを整理します。
排水管工事と排水制限については、マンションの排水管工事とは?交換・立て管・横主管・費用・排水制限の確認方法をご確認ください。
断水・トイレ利用等については、別記事「大規模修繕で断水はある?給排水工事・停止時間・トイレ利用と住民案内の確認ポイント」で詳しく整理しています。
配管図・竣工図が見つからない場合はどうする?
配管図・竣工図が不足していても、それだけで配管工事ができないとは限りません。図面だけで判断せず、現地調査や過去の工事記録等を組み合わせて実際の配管経路を確認します。
築年数が経過したマンションでは、次のような状況も考えられます。
- 竣工図の一部が見つからない
- 設備図が不足している
- 過去の改修内容が図面へ反映されていない
- 図面と現在の設備状態が異なっている
その場合は、
- 現地調査
- 点検口から確認できる範囲
- 過去の工事記録
- 漏水履歴
- 管理会社等が保有する資料
- 区分所有者側の改修記録
などを組み合わせます。
図面がないから想像で配管経路を決めることは避けます。逆に、古い図面が残っているからといって現況と完全に一致すると決めつけることも避けます。
住戸ごとのリフォームで配管経路が違うことはある?
過去の住戸内リフォームによって、水回り設備や住戸内配管が変更されている可能性はあります。ただし、リフォームを行った住戸の配管が必ず変更されているとは限らないため、必要な場合に履歴を確認します。
建物全体の配管図があっても、住戸内の改修によって新築時とは一部条件が変わっている場合があります。
特に専有部分側まで一体的な配管更新を検討するときは、住戸ごとの差が工事条件へ影響する可能性があります。
過去の改修・修繕履歴の確認については、マンションの修繕履歴に関する記事も参考にしてください。
漏水が起きたら配管の管理区分をどう確認する?
漏水が発生した場合、水が見えた場所だけから原因配管や管理区分を判断しません。まず原因箇所と該当する配管を確認し、その配管がどの管理区分なのかを整理します。
たとえば天井から水が出てきたとしても、それだけで「上階住戸の専有部分が原因」と確定できるわけではありません。
確認する順番は、
漏水時は原因から管理区分へ進む
です。
No.411では、保険や損害賠償の判断までは扱いません。
まず「原因となった配管が、どの管理区分なのか」を整理するところまでを担当します。
外壁の大規模修繕と給排水管更新は同時に行う?
外壁等の大規模修繕と給排水管更新を、必ず同じ時期に行う必要があるわけではありません。配管の劣化状況、漏水履歴、過去の更新、長期修繕計画、資金計画等を踏まえて判断します。
判断材料としては、次のような項目があります。
- 配管の実際の劣化状況
- 配管材料
- 漏水・不具合の履歴
- 過去の更新工事
- 長期修繕計画
- 今回の大規模修繕との施工上の関係
- 資金計画
- 断水・立ち入り等の住民負担
大規模修繕と設備更新を同時に行うかどうかについては、50~70戸マンションの大規模修繕と設備更新は同時に行う?給排水・照明・インターホンなどの判断ポイントで詳しく解説しています。
配管の工事範囲を決めるために最低限そろえたい3つの資料
配管の管理区分や今回の工事範囲を判断するときは、管理規約・配管図等・今回の工事範囲を横に並べて確認します。どれか一つだけでは、実際の工事範囲や費用負担まで判断しにくい場合があります。
配管の工事範囲を決める3つの資料
誰が管理する範囲として定められているのかを確認します。
対象となる配管が実際にどこを通り、どこへ接続しているのかを確認します。
今回の大規模修繕で、実際にどの配管まで施工するのかを確認します。
「誰が管理する配管を、今回どこまで、誰の費用で工事するのか」を整理するには、管理規約・配管経路・工事範囲を一緒に見ることが重要です。
ワンリニューアルでは「立て管だから共用」のような名称だけで工事範囲を決めません
給排水管は建物全体でつながっている設備ですが、管理区分や今回の工事対象まで一律とは限りません。
ワンリニューアルでは、配管図・管理規約・実際の設備状況・今回の工事範囲を重ね、管理組合が「どこまで工事するのか」を確認できる状態にすることを重視しています。
まとめ|配管工事は「どこにある管か」ではなく管理区分と工事範囲を重ねて考える
マンションの給水管・排水管は、一つの設備として建物全体につながっています。
しかし、管理区分まで一本ではありません。
大規模修繕で配管工事を検討するときは、次の順番で整理します。
最も避けたいのは、
- 「住戸内だから個人」
- 「PSだから管理組合」
- 「立て管だから共用」
- 「一戸しか使わないから専有」
という、場所や名称だけによる即断です。
No.411の結論は、「配管図+管理規約+今回の工事範囲」の3つを重ねることです。
これによって、管理組合は「どの配管を、誰の管理範囲として、今回どこまで工事するのか」を整理しやすくなります。
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大規模修繕の配管に関するよくある質問
Q.大規模修繕の配管は共用部分ですか?
A.マンションの給排水管は、すべてが共用部分とは限りません。配管の系統や位置だけで判断せず、管理規約・配管図・実際の配管経路を確認して、共用部分と専有部分の境界を整理します。
Q.PS内の配管は共用部分ですか?
A.PS内にあるという理由だけで、すべての配管を共用部分と判断することはできません。どの配管がどの住戸・系統につながっているかを確認し、管理規約上の管理区分と照合します。
Q.専有部分の配管も大規模修繕で交換できますか?
A.共用配管の更新と合わせて専有部分側の配管工事を検討する場合はあります。ただし、同時施工だから管理組合負担になるとは限らず、管理規約・工事範囲・費用負担・住戸内立ち入りなどを整理する必要があります。
Q.給水管・排水管はどこから個人負担になりますか?
A.個人負担へ切り替わる位置を全国共通で一律に示すことはできません。配管経路と管理規約を確認し、その配管が共用部分・専有部分のどちらとして管理されているかを整理したうえで費用負担を判断します。
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