大規模修繕の契約後に施工会社を変更できる?解除条件・費用精算・工事引継ぎの確認ポイント

大規模修繕の契約後でも、双方の合意や法令・契約上の解除権に基づいて、施工会社を変更できる場合があります。ただし、契約を解除できることと、違約金や損害賠償などの費用を負担せずに変更できることは同じではありません。
マンションやアパートの大規模修繕で施工会社と契約したものの、「説明された工事内容と違う」「施工会社の対応に不安がある」「予定していた工事が進まない」といった理由から、別の施工会社への変更を検討する管理組合や一棟オーナーもいるでしょう。
しかし、契約締結後の施工会社変更は、新しい会社を探すだけでは完了しません。
現在の契約をどのような根拠で解除するのか、既に施工された部分の代金をどう精算するのか、工事中の足場や材料をどう扱うのかなど、複数の問題を整理する必要があります。
また、工事途中で施工会社を変更する場合は、既施工部分の品質や保証、残工事の範囲、現場の安全確保、新施工会社への資料の引継ぎも重要になります。
大切なのは、施工会社を変更したいという気持ちだけで判断せず、契約解除の根拠・費用負担・工事引継ぎを分けて確認することです。
この記事では、大規模修繕の契約後に施工会社を変更できる条件、解除方法の違い、出来高・支払済み代金の精算、工事の引継ぎ、管理組合が確認したい手続きを解説します。
- 契約後・着工後でも施工会社を変更できる条件
- 合意解除・契約違反・発注者都合による解除の違い
- 出来高・材料・足場などの費用精算
- 新しい施工会社へ引き継ぐ資料と工事範囲
- 管理組合が変更前に確認したい承認・保証・現場管理

目次
大規模修繕の契約後に施工会社を変更できる?
大規模修繕の契約後でも、合意解除や法令・契約上の解除権に基づき、施工会社を変更できる場合があります。ただし、解除の根拠や工事の進捗によって手続き・費用負担が異なるため、契約書と約款を確認する必要があります。
契約締結後でも変更できる場合がある
大規模修繕の工事請負契約を締結すると、発注者と施工会社の間に契約上の権利義務が発生します。
そのため、発注者が施工会社を変更したいと考えた場合でも、一方的に契約がなかったことになるわけではありません。
一方、契約締結後であっても、当事者の合意や、契約書・法令で定められた条件に基づいて契約を解除できる場合があります。
主な方法は次の3つです。
① 双方の合意による解除
管理組合等の発注者と施工会社が、協議によって契約終了の条件に合意する方法です。
② 債務不履行等を理由とする解除
施工会社による契約上の義務違反などを理由として、法令や契約条件に基づき解除を検討する方法です。
③ 注文者の都合による解除
仕事の完成前に、注文者が損害を賠償して契約を解除する民法上の制度などを検討する方法です。
この3つは、解除の根拠だけでなく、費用負担や必要な手続きが異なります。
また、契約書に解除条項が見当たらない場合でも、民法に基づく解除権が問題になることがあります。
ただし、施工会社への不信感や担当者への不満があるだけで、必ず無償解除できるわけではありません。
まずは契約書と約款を確認し、何が問題となっているのかを具体的に整理する必要があります。
工事請負契約書で確認する基本事項については、大規模修繕の工事請負契約書とは?契約図書・金額・工期・保証の確認方法も参考になります。
着工前と着工後では確認事項が異なる
施工会社の変更を検討する場合、現在の工事が着工前なのか、既に着工しているのかによって確認事項が変わります。
着工前に確認したいこと
着工前であっても工事請負契約が成立していれば、施工会社が既に工事準備を進めている場合があります。
例えば、材料の発注、協力会社の手配、工程の調整、施工計画の作成などです。
そのため、着工前に解除する場合でも、契約条件や準備状況によっては費用・損害賠償などの問題が生じる可能性があります。
確認したいのは、契約条項、準備業務の進捗、発注済み材料、工事予定日、解除に伴う損害、発注者側の承認手続きです。
着工後に確認したいこと
工事が始まっている場合は、契約解除に加えて、施工済み部分や現場の状態を整理する必要があります。
特に、次の内容を確認しましょう。
- 施工が完了している工事項目
- 施工途中の工事と未着手の工事
- 支払済み代金と請求済み金額
- 出来高の評価と必要な是正工事
- 足場・養生・発注済み材料の扱い
- 施工写真・検査記録などの引継ぎ資料
- 工事を中断する間の安全対策
着工後だから必ず解除できないというわけではありません。ただし、現場の状況や精算内容が複雑になる可能性があります。
着工前でも契約に基づく費用や損害が問題になる場合があります。一方、着工後でも解除が認められる場合があります。
工事の進捗だけで判断せず、解除理由と契約条件を合わせて確認することが重要です。
管理組合では契約変更の承認権限を確認する
分譲マンションの大規模修繕では、施工会社の変更が管理組合の予算や工事計画に影響する場合があります。
そのため、理事会や修繕委員会で変更を検討する際には、契約解除や新たな発注について、誰が決定する権限を持つのか確認する必要があります。
具体的には、管理規約、総会決議の内容、工事予算、契約名義、理事会の権限などを確認します。
例えば、新しい施工会社へ発注することで工事金額や工事範囲が変わる場合は、既存の承認内容との整合性を確認する必要があります。
ただし、施工会社の変更には必ず総会決議が必要、あるいは理事会だけで決められると一律には判断できません。
必要な承認手続きは、管理規約・既存決議・契約内容・工事計画などに基づいて確認しましょう。
一棟オーナーの場合も、共同所有関係や融資条件など、個別の契約・権限関係がある場合は確認が必要です。
契約解除の条件は?3つの解除方法を理解する
契約解除には、双方が合意する方法、債務不履行等を理由とする方法、注文者が仕事の完成前に損害を賠償して解除する方法などがあります。解除理由によって手続きや費用負担が異なるため、状況を整理して判断します。
① 双方の合意による解除
合意解除は、発注者と施工会社が話し合い、契約を終了する条件について合意する方法です。
例えば、工事計画の変更や発注者側の事情などにより、両者が契約終了を検討する場合があります。
ただし、発注者が希望したからといって、施工会社が必ず合意に応じるとは限りません。
双方が合意する場合には、少なくとも次の内容を明確にすることが重要です。
- 契約を終了する日と対象範囲
- 工事の中止・撤収に関する日程
- 既に施工された部分の確認方法
- 支払済み代金と残代金の精算
- 発注済み材料の所有・引渡し・費用負担
- 足場や仮設設備の撤去・継続使用
- 施工記録や工事資料の取扱い
- 既施工部分の保証と不具合対応
話し合いで合意できた場合でも、口頭説明だけに頼ると、後から費用や工事範囲について認識が異なる可能性があります。
そのため、必要に応じて解除合意書などを作成し、契約終了の条件を書面で整理しましょう。
合意解除では、契約を終了することだけでなく、精算と現場の引渡し条件まで明確にすることが重要です。
② 契約違反・債務不履行等による解除
施工会社が契約上の義務を履行しない場合には、債務不履行等を理由とする解除が問題になることがあります。
例えば、正当な理由のない工事着手の遅れ、重大な契約内容との相違、契約上の義務を履行しない状態などです。
ただし、工事が遅れている、説明が不足しているという事情だけで、直ちに契約を解除できるとは限りません。
民法第541条では、原則として、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がない場合などに解除できると定められています。
一方、民法第542条では、履行が不可能である場合や履行を拒絶する意思が明確に示されている場合など、一定の条件を満たすときに催告なしで解除できることが定められています。
また、債務不履行が軽微である場合や、発注者側の事情によって履行できない場合などには、解除が認められない可能性もあります。
契約違反が疑われる場合は、次の内容を整理しましょう。
- 契約書に定められた施工内容や工期
- 施工会社が履行していないと考える義務
- 問題が発生した日時や経緯
- 施工会社への連絡・催告等の履歴
- 施工会社からの回答や改善状況
- 契約上の解除条項と法令上の条件
特に、契約違反の有無について当事者間で認識が異なる場合は、解除通知を行う前に弁護士などの専門家へ相談することも重要です。
工事遅延の理由や程度、契約上の工期、発注者側の事情、催告の要否などによって判断が異なります。
契約違反を理由とする解除では、解除根拠と事実関係の確認が重要です。
③ 発注者の都合による解除
施工会社に明確な契約違反がない場合でも、発注者側の事情によって契約の終了を検討することがあります。
例えば、工事計画そのものを変更する場合や、発注者の事情によって施工会社の変更を希望する場合です。
民法第641条では、請負人が仕事を完成しない間は、注文者が損害を賠償して契約を解除できると定められています。
ただし、これは発注者がいつでも無償で解除できるという意味ではありません。
解除によって施工会社に生じる損害について、賠償が問題になる場合があります。
例えば、発注済み材料や工事準備に関係する費用、解除がなければ得られた利益などが、個別の事情に応じて検討対象となることがあります。
ただし、施工会社から請求された金額が、すべて当然に認められるわけではありません。
損害の内容や金額、既に支出を免れた費用、契約条件などを確認する必要があります。
注文者都合による解除では、解除できるかどうかと、どの範囲の損害を賠償する必要があるかを区別しましょう。
なお、民法第641条は仕事の完成前を前提とする規定です。完成後の契約関係には同じ前提で適用できません。
大規模修繕の契約解除方法と確認事項
解除の方法によって確認すべき条件が異なります。次の表で基本的な違いを整理します。
※👉横にスクロールできます
いずれの方法でも、解除に伴う費用や損害賠償の発生有無・金額は、法令や契約内容、工事の進捗、当事者間の合意などによって異なります。
また、契約解除の意思表示による法的効果と、実際の現場撤収・費用精算・工事引継ぎが完了することは別です。
解除を検討する際は、法律上の条件だけでなく、工事を安全に終了・引継ぎできるかも確認しましょう。
参考:e-Gov法令検索「民法」第540条・第541条・第542条・第543条・第641条

施工会社変更時の費用精算はどうする?
施工会社を工事途中で変更する場合、既施工部分の出来高、支払済み代金、発注済み材料、仮設設備、解除に伴う損害等を整理します。すべてが自動的に返金・請求されるわけではなく、契約内容と施工実態を確認して精算します。
既に施工した工事の出来高を確認する
大規模修繕の工事途中で契約を解除する場合、まず確認したいのが、どこまで工事が進んでいるかという点です。
出来高とは、工事の進捗に応じて施工済み部分を把握する際の考え方です。
例えば、外壁補修が完了している部分、防水工事が途中まで進んでいる部分、まだ着工していない工事などを区別します。
確認するときは、単に「工事が何割進んだか」ではなく、工事項目ごとの施工数量や品質、検査の状況などを整理します。
特に、次の状態を分けて確認しましょう。
- 施工が完了している部分
- 施工後の検査が完了している部分
- 施工途中で未完成の部分
- まだ着手していない部分
- 不具合があり手直しを要する部分
民法第634条では、仕事の完成前に請負契約が解除された場合などについて、可分な部分の給付によって注文者が利益を受けるときは、その利益の割合に応じた報酬を請求できることが定められています。
ただし、施工途中の部分がすべて完成部分として評価され、その代金を全額請求できるという意味ではありません。
実際の出来高精算では、工事の完成状態・品質・注文者が受ける利益・契約上の精算方法などを確認する必要があります。
施工状況の認識が異なる場合は、施工写真や検査記録などを確認し、必要に応じて建築の専門家による現地確認も検討しましょう。
支払済み金額と精算額を照合する
契約解除時には、既に支払った工事代金と、実際に施工された工事の評価額を照合する必要があります。
例えば、工事代金を契約時・工事途中・完成時などに分けて支払う契約では、支払済み金額が施工済み部分の評価額と一致しているとは限りません。
そのため、次の項目を整理します。
- 契約金額:当初の工事請負代金
- 支払済み金額:既に施工会社へ支払った金額
- 請求済み金額:未払い分を含め施工会社から請求された金額
- 出来高評価額:施工済み部分の契約上の評価額
- 追加・変更工事:別途合意した工事の内容と金額
- 未施工部分:まだ実施されていない工事とその金額
- 解除に伴う費用:精算や損害賠償の対象となり得る項目
これらを整理したうえで、返金・追加支払・相殺などの扱いを確認します。
ただし、支払済み代金が出来高を上回っている場合でも、その差額が必ず全額返金されるとは限りません。
反対に、施工会社から追加請求があった場合も、その金額を無条件に支払う必要があるとは限りません。
解除理由や契約条件、施工済み部分の価値、損害賠償などによって精算結果が異なります。
返金・追加支払の判断では、請求の根拠と施工実態を確認することが重要です。
材料・足場・仮設設備の費用を確認する
施工会社を途中で変更する場合、工事現場にある材料や足場などの扱いも重要になります。
例えば、施工会社が既に発注した材料について、現場に搬入されているものと、まだ納入されていないものでは確認事項が異なります。
また、既に建物へ施工された材料と、未使用の材料についても分けて整理する必要があります。
確認したい主な項目は、次のとおりです。
① 発注済み・搬入済み材料
材料の発注状況、納入状況、所有関係、返品や転用の可否、費用負担などを確認します。
新施工会社が同じ材料を使用できるかについても、仕様や品質、保管状態、施工条件などから判断する必要があります。
② 既に施工された材料
建物へ施工済みの材料については、施工範囲や使用材料、品質確認の記録を整理します。
特に、防水工事や外壁補修などでは、施工途中の状態を後から確認しにくくなる場合があります。
③ 足場・仮設設備
元の施工会社が設置した足場を、新しい施工会社がそのまま利用できるとは限りません。
足場の所有・賃貸関係、使用権限、安全確認、設置条件、契約終了時の撤去義務などによって取り扱いが異なります。
また、元の施工会社が足場を撤去し、新しい施工会社が再設置する場合は、費用や工期に影響する可能性があります。
足場を残して利用するか、撤去して再設置するかは、契約関係と安全条件を確認して判断しましょう。
解除に伴い追加費用が発生する場合
施工会社の変更に伴い、当初の工事費とは別に費用が必要になる場合があります。
例えば、次のような項目です。
- 工事中断中の現場保全に必要な費用
- 施工済み部分や残工事の再調査費用
- 新施工会社への再見積に関係する費用
- 工事再開に伴う準備費用
- 仮設設備の変更・撤去・再設置に関係する費用
- 契約解除に伴う損害賠償
ただし、これらがすべての案件で必ず発生するわけではありません。
また、費用が発生する場合でも、誰が負担するかは解除理由や契約条件によって異なります。
特に、契約違反を理由として解除する場合と、発注者の都合によって解除する場合では、費用の扱いが異なる可能性があります。
そのため、施工会社の変更を検討するときは、元の契約の精算額と、新しい施工会社による残工事の費用を分けて把握することが重要です。
法的な損害賠償や精算金額について争いがある場合は、弁護士などの専門家に確認することも検討してください。
大規模修繕の工事内容・見積でお悩みの方へ
大規模修繕で施工会社の変更を検討する場合は、残工事の範囲や建物の状態を整理することが重要です。
ワンリニューアルでは、マンション・アパートの大規模修繕、外壁補修、防水工事などのご相談を承っています。
工事範囲や今後の修繕計画、見積内容について確認したいことがある場合は、お気軽にお問い合わせください。

工事途中で会社を変更する場合の引継ぎ方法
工事途中で施工会社を変更する際は、既施工部分と残工事を明確に分け、図面・仕様書・施工写真・検査記録・工程表等を整理します。新施工会社が安全や品質を確認し、どの範囲を引き受けるか明確にすることが重要です。
既施工部分と残工事を区分する
工事途中で施工会社を変更する場合、新しい施工会社がどの部分から工事を引き継ぐのかを明確にする必要があります。
例えば、外壁補修が完了している部分、防水工事が途中まで進んでいる部分、まだ着手していない鉄部塗装などを整理します。
また、施工が完了していても検査が終わっていない部分や、手直しが必要な部分がある場合は、別に確認することが重要です。
主に次の5つに区分します。
- 施工が完了した部分
- 検査が完了した部分
- 施工途中の部分
- 未着手の部分
- 是正や補修が必要な部分
例えば、防水工事では、下地処理が終わっているのか、防水層の施工途中なのか、最終的な検査まで完了しているのかによって、引継ぎ方法が異なる場合があります。
また、外壁補修では、下地補修やシーリング施工など、後から状態を確認しにくい工程もあります。
既施工部分の状態を写真・記録と現地で確認し、新しい施工会社が引き受ける工事範囲を明確にすることが重要です。
引継ぎに必要な資料を整理する
新しい施工会社が工事を再開するためには、元の施工会社がどのような条件で、どこまで施工していたかを把握する必要があります。
そのため、利用可能な工事資料を整理し、必要に応じて新施工会社へ提示できる状態にします。
主な資料は次のとおりです。
- 契約関係:工事請負契約書・契約約款・変更契約書
- 設計関係:設計図書・仕様書・施工範囲図
- 施工計画:施工計画書・工程表
- 施工実績:施工写真・施工日報・施工数量記録
- 品質確認:検査記録・是正記録・試験結果等
- 材料関係:使用材料一覧・納入状況・材料仕様書
- 変更履歴:追加・変更工事の記録・打ち合わせ議事録
- 保証関係:既施工部分の保証資料
- 仮設関係:足場・仮設設備の設置条件や管理資料
ただし、すべての工事でこれらの資料が作成されているとは限りません。
また、元の施工会社が保有する資料について、発注者へどこまで引き渡す義務があるかは、契約条件や資料の性質によって異なります。
そのため、資料の所有権や利用権、引渡し条件などを確認することも必要です。
資料が不足している場合は、新施工会社や専門家による追加調査の必要性を確認します。
新施工会社の現地調査と再見積
新しい施工会社へ残工事を依頼する場合、以前の施工会社が作成した見積をそのまま使用できるとは限りません。
例えば、既施工部分と残工事の境界、使用材料の仕様、未完成部分の品質、足場の利用条件などによって、残工事の施工方法が変わる場合があります。
そのため、新施工会社には、施工途中の現場状態を確認してもらう必要があります。
再見積では、主に次の点を整理しましょう。
- 残工事の対象範囲と数量
- 必要な材料・施工仕様
- 既施工部分との取り合い・接続方法
- 既施工部分に必要な補修・是正
- 足場・仮設設備の使用条件
- 工事再開までの準備と予定工期
- 追加調査・試験の必要性
- 新施工会社の工事保証の対象範囲
新施工会社が既施工部分の品質を確認できない場合や、元の施工方法と異なる工法を採用する場合には、追加の確認・補修が必要になる可能性があります。
そのため、再見積の結果、当初の予定とは異なる工事金額になることも考えられます。
残工事の再見積では、未施工部分の金額だけでなく、施工途中の状態から安全に工事を再開するための条件を確認することが重要です。
大規模修繕の見積内容を確認する基本的な方法については、大規模修繕の見積書の内訳・工事範囲・数量・仕様の確認ポイントも参考になります。
保証責任の区分を確認する
施工会社を途中で変更する場合、既施工部分の保証や不具合対応についても整理する必要があります。
特に注意したいのは、元の施工会社が施工した部分の保証が、新しい施工会社へ自動的に引き継がれるわけではないことです。
例えば、元の施工会社が外壁補修を担当し、新施工会社が防水工事を担当する場合は、それぞれの施工範囲と契約条件を確認する必要があります。
また、元施工会社が施工した部分について、新施工会社が補修や是正を行う場合は、その補修部分をどの範囲まで保証するのかも重要です。
① 元施工会社が施工した部分
既存契約・保証条件・解除合意等に基づき、今後の対応を確認します。
② 新施工会社が新たに施工する部分
新しい工事請負契約や保証書で、対象範囲と条件を確認します。
③ 新施工会社が補修・是正する部分
補修内容と責任・保証の範囲を新たな契約で確認します。
元施工会社の契約を解除した場合でも、既施工部分に関する請求や責任の扱いは、解除の条件や契約内容によって異なります。
また、新施工会社は元施工会社が施工したすべての部分について、無条件に責任を負うわけではありません。
既施工部分・新施工部分・是正部分を区別し、契約ごとの保証範囲を明確にすることが重要です。
工事中断中の現場保全も確認する
施工会社を変更する場合、工事の中断期間が生じる可能性があります。
その間も、建物や足場などの現場設備について、必要な安全対策を検討することが重要です。
例えば、外壁補修の途中で落下のおそれがある箇所が残っている場合や、防水工事の途中で雨水が浸入する可能性がある場合などです。
状況に応じて、立入管理、落下防止、雨水浸入防止、仮設設備の管理などを検討します。
ただし、具体的な保全方法は施工状態や設備の条件によって異なるため、必要に応じて専門家や関係施工会社に確認してください。
また、施工会社の倒産や事業停止によって工事が中断した場合は、解除・引継ぎとは別の問題が生じることがあります。
詳しくは、大規模修繕中に施工会社が倒産した場合の工事中断・支払・保証の確認ポイントも参考になります。
施工会社を変更する前の最終チェックポイント
施工会社を変更する前に、解除の根拠、精算条件、既施工部分、工事資料、現場保全、新会社の施工体制を確認しましょう。管理組合では承認手続きや居住者への説明も整理し、準備不足のまま工事を中断しないことが大切です。
契約解除・費用精算・工事引継ぎのチェックリスト
施工会社を変更する場合は、解除の手続きと工事再開の準備を並行して整理する必要があります。
特に、管理組合や一棟オーナーが確認しておきたい項目をまとめました。
契約書・約款の解除条項を確認した
解除理由と法的根拠を整理した
解除に必要な通知・協議方法を確認した
施工会社とのやり取りを記録している
管理組合の承認手続きを確認した
支払済み金額を整理している
既施工部分の出来高を確認できる
材料・仮設設備の扱いを確認した
現場の保全方法を確認した
引継ぎに必要な工事資料を整理している
新施工会社による現地確認を検討している
残工事の再見積条件を整理した
既施工部分の保証の扱いを確認した
居住者への説明内容を整理している
必要に応じて法律・建築の専門家へ相談した
新しい施工会社を選ぶ前に確認すること
契約解除を検討している場合、新施工会社の候補を探すことも必要ですが、現在の契約条件や解除の可否が確定していない段階で、新しい工事契約を進めることには注意が必要です。
例えば、元施工会社との工事範囲や現場の引渡し条件が整理されていなければ、新施工会社がいつから、どの工事を担当できるのか明確になりません。
また、既施工部分の状態や施工記録が不足している場合は、新施工会社が追加調査を求める可能性があります。
そのため、新施工会社を検討するときは、次の点を確認しましょう。
- 残工事の工種・施工範囲に対応できるか
- 施工途中の建物を現地確認できるか
- 既施工部分との取り合いを確認できるか
- 新しい工期や工程を設定できるか
- 現場管理・品質管理の体制があるか
- 新施工部分の保証条件が明確か
施工会社を変更したからといって、従来の問題がすべて解決するとは限りません。
変更後に必要になる工事費用や工期への影響、新施工会社の対応範囲などを総合的に判断することが重要です。
一般的な施工会社の比較・選定については、大規模修繕の施工会社選定で確認したい実績・見積・現場体制で解説しています。
管理組合・居住者への説明
分譲マンションで施工会社を変更する場合は、管理組合内で必要な承認手続きを確認するとともに、居住者への説明内容を整理することも重要です。
特に工事が始まっている場合は、施工会社変更によって工事中断や工期変更、バルコニーや共用部分の使用制限などに影響が出る可能性があります。
居住者への説明では、次の内容を整理するとよいでしょう。
- 施工会社変更を検討または決定した事実
- 工事中断の有無と今後の予定
- 工期や施工内容への影響
- 居住者の生活・共用部分の利用への影響
- 新しい工事予定が決まる時期
- 問い合わせ窓口
ただし、契約解除の理由や責任について当事者間で争いがある場合は、未確定の事項を事実として断定しないよう注意します。
例えば、「施工会社が契約違反をしたため変更する」と説明する場合でも、実際に契約違反が確認されているか、現在協議中なのかを区別する必要があります。
また、管理組合内では、解除後の精算や新たな工事契約について、必要な予算・決議・承認を確認しましょう。
契約を解除できるかだけでなく、費用を精算し、現場を安全に保全し、新しい施工会社へ工事を引き継げる状態かを確認することが重要です。
解除の根拠と施工状況を整理し、必要な手続きに沿って判断しましょう。

よくある質問(FAQ)
Q1. 大規模修繕の契約後でも施工会社を変更できますか?
契約締結後でも、当事者双方の合意や法令・契約上の解除権に基づき、施工会社を変更できる場合があります。ただし、解除理由や契約内容、工事の進捗によって手続きや費用負担が異なります。また、解除できることと、現場の撤収・費用精算・工事引継ぎが完了することは別です。契約書・約款を確認し、必要に応じて専門家へ相談しましょう。
Q2. 着工前なら違約金なしで解除できますか?
着工前であっても、工事請負契約が成立している場合は、無条件に費用負担なしで解除できるとは限りません。施工会社が既に材料を発注していたり、工事準備や協力会社の手配を進めていたりする場合があります。また、注文者都合の完成前解除では、民法第641条に基づく損害賠償が問題になる場合があります。契約条件と準備状況を確認することが重要です。
Q3. 工事途中で変更すると既施工部分の保証はどうなりますか?
元施工会社が施工した部分の保証は、新しい施工会社へ自動的に引き継がれるわけではありません。元施工会社との契約や解除条件、新施工会社との契約によって取り扱いが異なります。そのため、既施工部分、新たに施工する部分、新施工会社が補修・是正する部分を区別し、それぞれの保証対象と対応方法を確認する必要があります。
Q4. 新しい施工会社には何を引き継げばよいですか?
工事請負契約書、図面、仕様書、施工計画書、工程表、施工写真、検査記録、使用材料、施工数量、出来高、追加変更工事の記録などを整理します。また、残工事の範囲や足場等の仮設設備の扱い、既施工部分の保証条件も重要です。資料が不足している場合には、新施工会社による現地調査や追加確認が必要になることがあります。
まとめ|契約後の施工会社変更は解除条件・費用・引継ぎを確認
大規模修繕の施工会社と契約した後でも、法令や契約条件に基づいて契約を解除し、別の施工会社へ変更できる場合があります。
ただし、施工会社を変更できるかどうかと、費用負担なく変更できるかどうかは異なります。
特に、工事途中での変更では、既施工部分の出来高、支払済み代金、発注済み材料、足場などの仮設設備、残工事、新施工会社への引継ぎを確認する必要があります。
変更を判断する際は、次の点を整理しましょう。
- 解除条件:合意解除・債務不履行・注文者都合の違いを理解する
- 費用負担:違約金・損害賠償・出来高精算の根拠を確認する
- 支払済み代金:既払い金と最終精算額を区別する
- 既施工部分:完了・未完成・是正が必要な部分を整理する
- 現場保全:工事中断中の建物や仮設設備の安全を確認する
- 工事引継ぎ:図面・仕様書・施工記録などを整理する
- 保証:元施工会社と新施工会社の保証対象を区別する
- 承認手続き:管理規約や既存決議に基づいて確認する
大規模修繕の契約後に施工会社を変更する場合は、解除できるかどうかだけでなく、費用の精算と工事の引継ぎまで確認することが重要です。
契約条件、施工状況、建物の安全性、専門家の助言などを踏まえ、必要な手続きを整理しましょう。
マンション大規模修繕の工事計画や発注までの全体像については、マンション大規模修繕工事の目的・工事内容・費用・進め方も参考になります。
e-Gov法令検索「民法」
契約の解除については第540条・第541条・第542条・第543条・第545条、請負契約については第632条・第634条・第641条などが参考になります。
国土交通省「建設工事標準請負契約約款について」
民間建設工事標準請負契約約款(甲)・(乙)などで、契約解除や解除後の措置、工事費用の精算などについて確認できます。
※国土交通省の標準請負契約約款は、すべての個別契約に自動的に適用されるものではありません。実際に締結した契約書・採用した約款・特約条項などを確認する必要があります。
※本記事は、大規模修繕の契約解除・施工会社変更に関する一般的な確認事項を説明したものです。個別案件の解除可否、損害賠償、違約金、精算額、契約不適合責任などは、契約内容と事実関係によって異なります。必要に応じて弁護士等の専門家へ相談してください。
大規模修繕の工事計画・施工会社選びをご相談ください
ワンリニューアルでは、マンション・アパートの大規模修繕、外壁補修、防水工事などのご相談を承っています。
工事範囲や見積条件、今後の修繕工事についてお悩みの管理組合様・理事会様・一棟オーナー様は、お気軽にお問い合わせください。
建物の状態や必要な工事範囲を確認し、今後の工事計画や見積内容についてご相談いただけます。
※施工途中の工事を引き継ぐ案件については、現場の状況や施工条件等を確認したうえで対応可否を判断します。






